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退職時の住民税「一括徴収」とは?いくら引かれるかと確定申告の関係

住民税は前年の所得に対する後払いの税金です。給与から天引きする場合は年税額を12回に分け、6月から翌年5月までかけて徴収します。退職するとこの回数が途中で止まるため、まだ天引きしていない分を最後の給与や退職金からまとめて差し引きます。これが一括徴収です。引かれる額は退職する月で決まり、6月退職なら残り11 回分、3月退職なら残り 2回分です。この記事では退職月ごとの扱い、前年の年収別の金額、支給額が足りないときの扱い、確定申告との関係を順に見ます。

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記載の計算結果は一般的な条件による概算です。個別の条件で金額は変わるため、手続きに直結する場面では公的機関の資料を確認してください。 (免責事項)

ユイ
来月で退職します。給与がなくなれば、天引きされていた住民税も止まりますよね?
ハコ
納める義務は止まりません。住民税は前年の所得に対する税金で、今年の給与から後払いしている形です。退職しても去年の分は残ります。
ユイ
去年の分ですか。じゃあ残っている分はどうなるんですか。
ハコ
最後の給与や退職金からまとめて引かれるか、自分で納付書で納めるかのどちらかです。どちらになるかは退職する月で決まります。

退職時の住民税「一括徴収」とは?

まだ天引きしていない住民税を、最後の給与や退職金からまとめて差し引くことです。住民税が前年の所得に対する後払いの税金だからこうなります。東京都主税局は「個人住民税は前年の所得に対して計算しますので、税額が変わることは基本的にありません」としています。退職して給与がなくなっても、前年分として確定した税額はそのまま残ります。

給与から天引きする方式を特別徴収といいます。横浜市はこの方式を「年税額の12分の1の額(月割額)を6月から翌年の5月までの間、毎月給与の支払をする際に徴収し」と説明しています。年度の区切りが4月ではなく6月なのは、前年の所得が確定してから税額を計算するためです。事業主には5月31日までに特別徴収税額決定通知書が届き、そこに年税額と月割額が書かれています。

退職はこの12回の途中で起きます。前年の年収が 500 万円なら年税額の目安は 242,000 円、月割額は 20,167 円です。6月に退職すれば6月分の1回しか徴収できていないので、残り 11 回分の 221,833 円が未徴収のまま残ります。3月に退職すれば残りは 2 回分の 40,333 円です。この残りをまとめて引くのが一括徴収で、引かない場合は市区町村から納税通知書が届いて自分で納める普通徴収に切り替わります。

混同しやすいのが退職金そのものにかかる住民税です。こちらは給与とは別に、他の所得と切り離してその年に特別徴収されます。一括徴収の対象は給与にかかる前年分の住民税だけで、退職金の税額とは別の計算です。退職金にいくら税金がかかるかは退職金に税金はいくらかかる?退職所得控除の計算と手取り早見表で扱っています。特別徴収と普通徴収そのものの違いは副業の確定申告はいくらから必要?の住民税の節に整理してあります。

一括徴収になるかは退職する月で決まる

1月1日から4月30日までの退職は、本人の申出がなくても一括徴収です。地方税法321条の5第2項ただし書きに基づく勤務先の義務で、断れません。6月1日から12月31日までの退職は本人の申出があれば一括徴収、なければ普通徴収に切り替わります。5月中の退職は残りが5月分だけなので、その1回を最終月分として徴収して終わります。

徴収サイクルの上に退職日を重ねると次のようになります。

徴収は6月分から翌年5月分までの12回6/1〜12/31 退職申出があれば一括徴収1/1〜4/30 退職申出なしでも一括徴収5月678910111212345← 年度のはじめ(6月分)年度の終わり(5月分) →一括徴収が義務申出で選べる5月退職は最終月分
数字は徴収する月割額の月。年度の後半(翌1月から4月)に退職すると残り回数が少ない代わりに一括徴収が義務になり、年度の前半(6月から12月)に退職すると残り回数が多い代わりに一括徴収か普通徴収かを選べる。5月退職は残りが5月分だけなので、最終月分の1回を徴収して終わる。
退職日残る税額原則の扱い本人の申出
6月1日〜12月31日翌月分から翌年5月分まで普通徴収に切り替え申出があれば一括徴収
1月1日〜4月30日翌月分から5月分まで一括徴収不要(勤務先の義務)
5月1日〜5月31日5月分のみ最終月分として特別徴収不要

1月から4月の退職について、東京都主税局は勤務先向けにこう案内しています。「特別徴収できなくなる残りの税額については、元の勤務先から5月31日までに支給される給与、退職金等が残りの税額を超える場合には、従業員(納税義務者)の申し出がなくても5月31日までに支給される給与や退職金等から、一括して特別徴収してください」。藤沢市も同じ扱いを「地方税法第321条の5第2項ただし書きにより、特別徴収できなくなる税額は、納税義務者本人からの申し出がなくても、5月31日までの間に支払いをする給与又は退職手当等から一括して特別徴収しなければなりません」と説明しています。

6月から12月の退職では扱いが逆になります。同じ主税局の案内は「特別徴収できなくなる残りの税額は、普通徴収に切り替えることになり、従業員(納税義務者)から直接納付していただきます」としています。一括徴収してほしい場合は勤務先に申し出ます。残り回数が最大の 11回になるのは6月退職で、モデルケースでは 221,833 円が一度に引かれます。選べる制度になっているのは、この金額が最後の給与を圧迫するからです。

5月中の退職は残りが5月分だけです。主税局は「5月退職の場合も、最終月分として特別徴収により納入していただきます」としています。一括徴収という手続きにはならず、通常の月と同じ1回分が引かれて年度が終わります。

ユイ
1月退職だと一括徴収が強制なんですよね。強制なのに残り 4回分だけなんですか?
ハコ
年度の終わりが近いので残りが少ないんです。モデルケースだと 80,667 円です。強制されるのは、5月までに払う給与や退職金で足りるからです。
ユイ
逆に6月退職は残り 11 回分で 221,833 円ですか。これを強制されたらつらいですね。
ハコ
だから6月から12月は選べます。ただし選ばなければ納付書が届きます。払わなくていいわけではありません。

一括徴収でいくら引かれる?

月割額 × 残っている回数です。月割額は年税額の12分の1で、残り回数は退職月から年度末(5月分)までの数です。前年の年収別・退職月別に並べると次のようになります。協会けんぽ(東京都)加入・扶養なし・基礎控除以外の所得控除なしを前提とした目安です。

前年の年収住民税の年税額月割額1月退職(4 回分)3月退職(2 回分)6月退職(11 回分)9月退職(8 回分)12月退職(5 回分)
300 万円117,400 円9,783 円39,133 円19,567 円107,617 円78,267 円48,917 円
400 万円176,700 円14,725 円58,900 円29,450 円161,975 円117,800 円73,625 円
500 万円242,000 円20,167 円80,667 円40,333 円221,833 円161,333 円100,833 円
600 万円307,300 円25,608 円102,433 円51,217 円281,692 円204,867 円128,042 円

表の金額は年税額の12分の1をそのまま掛けた目安です。実際の月割額は市区町村が特別徴収税額決定通知書で通知し、100円単位に整えられます。年税額を12で割ると端数が出るため、通知書では6月分と7月以降分の金額が違う額になっています。正確な残額は勤務先の担当者か市区町村の課税担当に確認してください。

年税額そのものは退職月で変わりません。変わるのは徴収済みの分と一括徴収される分の比率です。前年の年収 500 万円(年税額 242,000 円)で退職月ごとに分けると次のようになります。

0円6万円13万円19万円25万円1月退職: 退職月までに徴収済み 16万円1月退職: 一括徴収または普通徴収に回る残り 8万円1月退職3月退職: 退職月までに徴収済み 20万円3月退職: 一括徴収または普通徴収に回る残り 4万円3月退職6月退職: 退職月までに徴収済み 2万円6月退職: 一括徴収または普通徴収に回る残り 22万円6月退職9月退職: 退職月までに徴収済み 8万円9月退職: 一括徴収または普通徴収に回る残り 16万円9月退職12月退職: 退職月までに徴収済み 14万円12月退職: 一括徴収または普通徴収に回る残り 10万円12月退職退職する月
退職月までに徴収済み一括徴収または普通徴収に回る残り

棒の高さはどの退職月でも 242,000 円で同じです。6月退職は徴収済みが1回分しかないため上段の残りが最も厚く、3月退職は 2 回分だけが残ります。一括徴収は納める総額を増やす仕組みではありません。前倒しで払うか、退職後に納付書で払うかの違いです。

効くのはその月の手取りです。年収 600 万円の人の手取り月額の目安は 388,500 円です。6月に退職して一括徴収を申し出ると、前年分の残り 11 回分の 281,692 円が加わり、手取りは 106,808 円まで下がります。その月の手取りの 73%相当が住民税に回る計算です。自分の年収での手取り月額と住民税の年税額は給与の手取り計算で確認できます。入力はブラウザ内で処理され、外部に送信されません。

退職金が出る場合は、退職金からも一括徴収できます。地方税法321条の5第2項ただし書きが徴収の対象を「給与又は退職手当等」としているためです。勤続 30年・退職金 2,000 万円・非役員なら、退職金にかかる所得税 155,700 円と住民税 250,000 円を引いた手取りは 19,594,300 円です。ここから1月退職で給与分の一括徴収 80,667 円(前年の年収 500 万円の場合)が引かれるので、実際の入金は 19,513,633 円になります。自分の勤続年数と退職金額での手取りは退職金の手取り計算で計算できます。役員区分や勤続5年以下の特例にも対応しています。

一括徴収しきれないときはどうなる?

一括徴収は行われず、残りは普通徴収に切り替わります。1月から4月の退職でも同じです。東京都主税局は勤務先向けの案内で、一括徴収の義務に「死亡退職の場合や、一括徴収すべき金額が退職手当等の金額を超える場合は、この限りではありません」と例外を付けています。藤沢市も「一括して特別徴収すべき金額が退職手当等の金額を超える場合は、この限りではありません」としています。

起きやすいのは、退職金がなく最終給与も少ない場合です。月の途中で退職して給与が日割りになった、欠勤や休職で支給額が下がっていた、といった状況です。月割額は前年の年収で決まるので、去年の収入と今年の最終給与の差が開いているときに不足しやすくなります。

普通徴収に切り替わると、市区町村から自分宛に納税通知書が届きます。納期は地方税法320条が「6月、8月、10月及び1月中(当該個人の市町村民税額が均等割額に相当する金額以下である場合にあつては、6月中)において、当該市町村の条例で定める」としており、多くの自治体では6月・8月・10月・翌年1月の年4回です。年度の途中で切り替わった場合は、残っている納期に振り分けられます。回数が減るぶん1回あたりの額は大きくなります。納期と金額は届いた納税通知書で確認してください。

転職先が決まっている場合は、天引きを続ける選択もあります。退職する会社が「給与所得者異動届出書」に転職先を記入して市区町村へ提出すると、残りの税額が転職先の給与からの天引きに引き継がれます。異動届の期限は事由が発生した日の翌月10日までで、提出するのは勤務先です。手続きは自分では進められないため、退職前に前の勤務先と転職先の担当者に希望を伝えてください。

再就職しない場合は、普通徴収の納期が失業中に来ます。住民税は前年の所得に対する税金なので、収入がゼロになっても納付は続きます。雇用保険の基本手当は非課税ですが、そこから住民税を納めることになります。基本手当の見込み額は失業保険 給付額シミュレーターで試算でき、申請から初回振込までの日程は失業保険はいつからもらえる?のガイドにまとめてあります。納付書の納期と初回振込の時期を並べて、資金の谷を先に把握してください。納付が難しい場合の分割や猶予の相談は市区町村の納税担当が窓口です。

一括徴収された分は確定申告に関係する?

関係しません。一括徴収は住民税をいつ納めるかを変える手続きで、所得税の確定申告はいくら納めるかを計算する手続きです。一括徴収された住民税を確定申告で申告し直す必要はなく、申告によって金額が変わることもありません。税額は前年の所得に対して確定しています。退職に合わせて納める時期をまとめただけです。

源泉徴収票に書かれる金額も所得税だけです。住民税の額は載りません。一括徴収された住民税は確定申告書のどの欄にも記入しません。

一方で、確定申告をしたほうがよい場合はあります。年の途中で退職して年末までに再就職しなかったときです。国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」は、この場合に給与から源泉徴収された所得税が納めすぎになっていることがあり、還付申告で戻ると案内しています。一括徴収とは別の話です。

この確定申告は翌年度の住民税にも効きます。所得税の確定申告書を提出すると、その内容が市区町村に回り、住民税の申告書は提出したものとみなされます(地方税法第317条の3)。退職した年の所得が下がっていれば、翌年度の住民税もその分下がります。逆に申告しないままだと、控除が反映されない状態で翌年度の税額が決まることがあります。退職後の住民税の申告が必要かどうかの判断は副業の確定申告はいくらから必要?20万円ルールと住民税の申告で扱っています。年末調整で戻る金額の考え方は年末調整でいくら戻る?還付金の計算式と控除別の増える額にまとめてあります。在職中の年末調整と住民税の関係は年末調整で住民税は戻る?所得税との違いと反映時期で扱っています。

まとめ

押さえる順番は3つです。退職月を確定する。残り回数から金額を出す。納め方を決める。

  • 退職月: 1月1日から4月30日の退職は本人の申出がなくても一括徴収です(地方税法321条の5第2項ただし書き)。6月1日から12月31日は申出があれば一括徴収、なければ普通徴収です。5月中の退職は残りが5月分だけなので通常どおり終わります
  • 金額: 月割額 × 残り回数です。前年の年収 500 万円なら、6月退職で 11 回分の 221,833 円、3月退職で 2 回分の 40,333 円です。最終給与の手取りへの影響は給与の手取り計算、退職金の手取りへの影響は退職金の手取り計算で確認できます
  • 納め方: 支給額が残税額に届かなければ一括徴収は行われず普通徴収に切り替わります。転職先が決まっているなら「給与所得者異動届出書」で天引きを引き継げます。どちらも手続きするのは勤務先なので、退職前に担当者へ希望を伝えてください
  • 確定申告: 一括徴収と確定申告は別ルールで、申告し直す必要はありません。ただし年の途中で退職して再就職しなかった場合は、所得税の還付申告をすると翌年度の住民税にも反映されます

この記事の金額は前提を置いた目安です。実際の年税額と残額、一括徴収されるかどうかの最終的な扱いは、住所地の市区町村と勤務先が決めます。普通徴収の納期は自治体の条例で定まり、一括徴収の運用や納付の相談窓口も自治体ごとに案内が異なります。自分のケースは市区町村の課税担当と勤務先の給与担当に確認してください。

よくある質問

退職時の住民税の一括徴収にデメリットはありますか?
納める総額は変わりません。一括徴収は徴収の方法を変えるだけで、年税額そのものは動きません。デメリットは、その月の手取りが一度に落ち込むことです。前年の年収が 600 万円の人が6月に退職すると残り 11 回分の 281,692 円が最後の給与から引かれ、手取りの目安 388,500 円のうち 73%が住民税に回ります。逆にメリットは、退職後に納付書で納める手間と納め忘れがなくなることです。6月1日から12月31日までの退職なら一括徴収か普通徴収かを選べるので、退職後の収入の見込みで判断してください。
転職先が決まっている場合も一括徴収されますか?
転職先で特別徴収を続けられます。退職する会社が「給与所得者異動届出書」に転職先を記入して市区町村へ提出すると、残りの税額が転職先の給与からの天引きに引き継がれます。東京都主税局は異動届の期限を「その事由が発生した日の翌月10日までに事業主(給与支払者)が、従業員(納税義務者)が居住する区市町村に「異動届」を提出する必要があります」としています。ただし1月1日から4月30日の退職は一括徴収が原則です。引き継ぎを希望する場合は、退職前に前の勤務先と転職先の担当者に伝えて手続きを確認してください。
退職金から住民税が引かれるのは一括徴収のせいですか?
2つの住民税が別々に引かれます。1つは退職金そのものにかかる住民税で、他の所得と切り離してその年に特別徴収されます。もう1つが給与にかかる前年分の住民税で、一括徴収の対象になるのはこちらです。勤続 30 年・退職金 2,000 万円・非役員なら退職金にかかる住民税は 250,000 円で、所得税と合わせた手取りは 19,594,300 円です。ここから1月退職で給与分の一括徴収 80,667 円(前年の年収 500 万円の場合)が引かれると、入金は 19,513,633 円になります。退職金そのものの税金の計算は「退職金に税金はいくらかかる?」のガイドで扱っています。
一括徴収されたら住民税の確定申告や還付の手続きが必要ですか?
必要ありません。一括徴収は納める時期をまとめるだけで、税額は前年の所得に対して確定済みです。納めすぎになる仕組みもないため、還付の手続きもありません。ただし年の途中で退職して年末までに再就職しなかった場合は、給与にかかる所得税が年末調整を受けられず納めすぎになっていることがあります。国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」がこのケースの還付申告を案内しています。所得税の確定申告書を提出すれば、その内容が市区町村に回るため住民税の申告書は提出したものとみなされ(地方税法第317条の3)、翌年度の住民税もその申告内容で計算されます。

根拠にした資料

この記事の前年所得課税と6月から翌年5月までの徴収サイクル・退職月による一括徴収の分岐・一括徴収しきれない場合の扱い・普通徴収の納期・異動届の期限・確定申告と住民税の申告の関係は次の資料に基づいています(リンクの到達確認は 2026 年 8 月時点)。

改正で変わる数値: 一括徴収の分岐(1月1日から4月30日は申出不要、6月1日から12月31日は申出制)は地方税法321条の5第2項の規定で、頻繁に変わるものではありません。普通徴収の納期は地方税法320条が6月・8月・10月・1月中と定め、具体的な納期限は市町村の条例によります。早見表の住民税額は所得割10%・均等割と森林環境税5,000円・調整控除2,500円の近似で計算した目安で、所得控除や自治体独自の税率で変わります。前提の詳細は給与の手取り計算の解説にまとめてあります。

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