ハコツールズ

退職金に税金はいくらかかる?退職所得控除の計算と手取り早見表

退職金にかかる税金は、勤続年数で決まる退職所得控除を引いた残りの半分に対して計算します。控除額を下回る退職金には税金がかかりません。この記事では控除額の計算式、勤続年数ごとの非課税ライン、勤続年数と退職金額を組み合わせた手取り早見表を示します。

公開: / 更新: / 制作・運営: ハコツールズ運営者

記載の計算結果は一般的な条件による概算です。個別の条件で金額は変わるため、手続きに直結する場面では公的機関の資料を確認してください。 (免責事項)

ユイ
退職金を 2,000 万円もらえるらしいんですが、給与と同じで 2 割か 3 割は税金で消えますよね。
ハコ
消えません。勤続 30 年・非役員なら、所得税と住民税を合わせて 405,700 円です。手取りは 19,594,300 円になります。
ユイ
98%も残るんですか。給与とそんなに違うんですね。
ハコ
退職所得控除と 1/2 課税があり、社会保険料も引かれません。ただし勤続年数が短いと事情が変わります。同じ 2,000 万円でも勤続 10 年なら税金は 2,029,200 円です。

退職金に税金はいくらかかる?

退職所得控除を引いた残りの 1/2 に、所得税と住民税がかかります。控除額を下回る退職金には税金がかかりません。勤続 30 年・退職金 2,000 万円・非役員なら、所得税 155,700 円と住民税 250,000 円で合計 405,700 円、手取りは 19,594,300 円です。

計算は次の順に進みます(出典: 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」)。

  1. 退職金の額面から退職所得控除額を引く。引ききれれば課税退職所得はゼロで税金もゼロ
  2. 残った金額を 1/2 にする(1,000 円未満は切捨て)。これが課税退職所得金額
  3. 課税退職所得に所得税の累進税率(5%〜45%)を当て、復興特別所得税 2.1% を上乗せする
  4. 課税退職所得の 10% が住民税。退職所得には均等割がかからない

勤続 30 年・2,000 万円の例を当てはめると、控除 1,500 万円を引いた 500 万円の半分、2,500,000 円が課税退職所得です。ここに所得税 10%(控除 97,500 円)と復興特別所得税、住民税 10% がかかります。

給与やボーナスなら同じ金額から社会保険料も引かれ、他の所得と合算した累進税率が当たります。退職金は違います。他の所得と分けて課税され、社会保険料もかかりません。収入の種類ごとに何が引かれるかは手取りはいくら?給与・ボーナス・退職金・配当の違いで比べています。

退職所得控除はどう計算する?勤続何年でいくらまで無税?

勤続 20 年以下は「40 万円 × 勤続年数」(最低 80 万円)、20 年超は「800 万円 + 70 万円 ×(勤続年数 − 20 年)」です。この控除額が、税金がかからない退職金の上限になります。勤続 30 年なら 1,500 万円まで、勤続 38 年なら 2,060 万円まで無税です。

勤続年数は勤務先に在籍した期間で数え、1 年未満の端数は 1 年に切り上げます。20 年 1 か月の在籍は 21 年です。下の表は非役員で「退職所得の受給に関する申告書」を提出済みの場合の控除額です。申告書を出していないと控除は使えません。この点は後の章で扱います。

勤続年数計算式退職所得控除額(= 無税で受け取れる上限)
10 年40 万円 × 10 年400 万円
15 年40 万円 × 15 年600 万円
20 年40 万円 × 20 年800 万円
25 年800 万円 + 70 万円 × 5 年1,150 万円
30 年800 万円 + 70 万円 × 10 年1,500 万円
35 年800 万円 + 70 万円 × 15 年1,850 万円
38 年800 万円 + 70 万円 × 18 年2,060 万円

上限に収まる退職金は無税です。確定申告も源泉徴収もなく、額面がそのまま手元に残ります。勤続 15 年なら退職金 600 万円以下、勤続 25 年なら 1,150 万円以下がその範囲です。中小企業退職金共済や企業年金を一時金で受け取る分も同じ枠を使うため、合算した額で判断してください。

勤続 20 年の前後で控除はどれだけ変わる?

20 年目までは 1 年で 40 万円、21 年目からは 1 年で 70 万円ずつ控除が増えます。勤続 19 年と 21 年では控除額が 110 万円違い、退職金 2,000 万円・非役員なら税金が 167,300 円変わります。差は 2 年だけです。

勤続年数退職所得控除課税退職所得税金の合計手取り
19 年760 万円6,200,000 円1,449,500 円18,550,500 円
20 年800 万円6,000,000 円1,388,700 円18,611,300 円
21 年870 万円5,650,000 円1,282,200 円18,717,800 円

19 年から 20 年への 1 年で税金が減るのは 60,800 円、20 年から 21 年への 1 年では 106,500 円です。同じ 1 年でも効き方が倍近く違います。控除が 1 年あたり 40 万円増える区間と 70 万円増える区間の境目が、勤続 20 年だからです。

端数の切り上げも同じ方向に効きます。20 年 0 か月で退職すると控除は 800 万円、1 か月長く在籍して 20 年 1 か月になると勤続 21 年と数えて 870 万円です。退職日を自分で選べる場合は確認する価値があります。ただし退職日は会社の規定や引き継ぎの都合で決まります。税金だけで決められるものではありません。金額の差を把握したうえで会社と相談する材料として使ってください。

退職金の手取り早見表(勤続年数 × 退職金額)

非役員・「退職所得の受給に関する申告書」提出済み・退職金以外の退職手当等なしを前提とした目安です。上段が手取り、下段が引かれる税金の合計と手取り率です。

勤続年数退職所得控除1,000 万円2,000 万円3,000 万円
10 年400 万円949.3 万円
税 50.7 万円 / 94.9%
1,797.1 万円
税 202.9 万円 / 89.9%
2,588.8 万円
税 411.2 万円 / 86.3%
20 年800 万円984.9 万円
税 15.1 万円 / 98.5%
1,861.1 万円
税 138.9 万円 / 93.1%
2,676.2 万円
税 323.8 万円 / 89.2%
30 年1,500 万円1,000 万円
無税 / 100%
1,959.4 万円
税 40.6 万円 / 98%
2,813.8 万円
税 186.2 万円 / 93.8%
38 年2,060 万円1,000 万円
無税 / 100%
2,000 万円
無税 / 100%
2,900.7 万円
税 99.3 万円 / 96.7%

勤続 30 年以上なら 1,000 万円は全額が控除に収まり、税金はかかりません。控除が 2,060 万円に届く勤続 38 年なら、2,000 万円でも無税です。逆に勤続 10 年で 3,000 万円を受け取ると税金は 4,111,800 円で、手取り率は 86.3%まで下がります。

右端の列(3,000 万円)の税金を所得税と住民税に分けると、勤続年数による減り方は次のようになります。

0円125万円250万円375万円500万円勤続10年: 所得税(復興特別所得税を含む) 281万円勤続10年: 住民税 130万円勤続10年勤続20年: 所得税(復興特別所得税を含む) 214万円勤続20年: 住民税 110万円勤続20年勤続30年: 所得税(復興特別所得税を含む) 111万円勤続30年: 住民税 75万円勤続30年勤続38年: 所得税(復興特別所得税を含む) 52万円勤続38年: 住民税 47万円勤続38年勤続年数
所得税(復興特別所得税を含む)住民税

棒が縮む理由は控除の増加だけではありません。課税退職所得が下がると所得税の累進税率の段も下がるため、所得税の側がより速く減ります。勤続 10 年から 38 年で、住民税は 1,300,000 円から 470,000 円へ(36.2%に)減ります。所得税は 2,811,800 円から 523,200 円へ(18.6%に)減ります。住民税の税率は 10% 固定です。課税退職所得と同じ比率でしか減りません。所得税はそれより深く落ちます。

自分の勤続年数と退職金額での手取りは退職金の手取り計算に入力してください。役員区分や勤続 5 年以下の特例にも対応しています。

税金はいつ・どうやって引かれる?確定申告は必要?

退職金が支払われるときに源泉徴収されます。引かれるのはこの一度だけです。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、それで課税は完結します。確定申告は不要です(出典: 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」)。

住民税も同じタイミングで差し引かれます。退職所得の住民税は他の所得と切り離してその年に特別徴収されるため、翌年度の住民税に上乗せされません。ただし退職までの給与にかかる住民税は通常どおり翌年度に課税されます。退職後の資金計画では、この給与分の住民税を見落とさないでください。

申告書を出さないと、退職所得控除も 1/2 課税も適用されません。退職金の額面全体に 20.42%(所得税 20% + 復興特別所得税)が源泉徴収されます。控除の枠内に収まる退職金でも一度は天引きされます。退職手続きのときに提出済みかを確認してください。出し忘れても確定申告で払いすぎた分は戻りますが、還付は翌年以降になります。

確定申告をしたほうがよい場合もあります。年の途中で退職して年末までに再就職しなかった場合、給与にかかる所得税は年末調整を受けられず納めすぎになっていることがあります(出典: 国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」)。退職金の課税とは別の話で、申告できる期間は翌年 1 月 1 日から 5 年間です。再就職先の給与での手取りは年収の手取り計算、年末調整で戻る金額の考え方は年末調整でいくら戻る?還付金の計算式と控除別の増える額で扱っています。

iDeCo の一時金と退職金が重なるとどうなる?

受け取る順番と間隔で控除額が変わります。退職所得控除の計算に使う年数が調整されるためです。iDeCo や企業型 DC の一時金は「掛金の拠出期間」を勤続年数とみなして控除を計算しますが、会社の退職金の勤続期間と重なる部分を二重に数えられないためです。

  • 一時金を先に受け取り、後から退職金: 退職金を受け取る年の前年以前 9 年内(改正前は 4 年内)に、令和 8 年 1 月 1 日以後に支払を受けた確定拠出年金の一時金があると重複期間の調整が入ります。いわゆる「5 年ルール」が「10 年ルール」に変わりました(令和 7 年度税制改正。令和 8 年分以後の所得税に適用され、令和 7 年以前に受け取った一時金は従来どおり 4 年内です)
  • 退職金を先に受け取り、後から一時金: 一時金を受け取る年の前年以前 19 年内に退職手当等を受けていると調整の対象です(いわゆる 20 年ルール。こちらは改正されていません)

調整の結果がいくらになるかは、拠出期間と勤続期間の重なり方、企業年金や中小企業退職金共済の有無で変わります。この記事の早見表は退職手当等が 1 つだけの前提で計算しています。両方を一時金で受け取る予定があるなら、数値はそのままでは使えません。受け取り方を決める前に、勤務先の退職金担当と運営管理機関、必要なら税務署に自分の条件で確認してください。

iDeCo の拠出中に減る税額はiDeCo 節税シミュレーターで試算できます。新 NISA との使い分けは新NISAとiDeCoはどっちを先に?節税額を比べて選ぶで扱っています。

まとめ

退職金の税金は、勤続年数で決まる控除額を超えた部分の半分にしかかかりません。勤続 30 年なら 1,500 万円まで無税で、2,000 万円を受け取っても税金は 405,700 円です。押さえる順番は 3 つです。自分の勤続年数での控除額、控除を超えた分の 1/2 に当たる税率、そして「退職所得の受給に関する申告書」の提出。取りこぼしが起きやすいのは 3 つ目です。

金額は勤続年数と退職金額の組み合わせで大きく動きます。自分の数字は退職金の手取り計算に入力してください。入力した退職金額や勤続年数はブラウザ内だけで計算され、サーバーに送信されません。

なお退職所得の課税方法は税制改正の議論が続いている分野です。この記事は 2026 年 8 月時点の制度に基づいています。

よくある質問

退職金はいくらまで税金がかかりませんか?
退職所得控除額までです。勤続 20 年なら 800 万円、勤続 30 年なら 1,500 万円、勤続 38 年なら 2,060 万円までの退職金には所得税も住民税もかかりません。控除額は「勤続 20 年以下は 40 万円 × 勤続年数、20 年超は 800 万円 + 70 万円 ×(勤続年数 − 20 年)」で計算します。ただし「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していることが前提です。
退職金の税金はいつ引かれますか?
退職金が支払われるときに、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税がまとめて差し引かれます。退職所得の住民税は他の所得と切り離してその年に特別徴収されるため、翌年度の住民税に上乗せされることはありません。ただし退職までの給与にかかる住民税は通常どおり翌年度に課税されます。
退職金をもらったら確定申告は必要ですか?
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で課税が完結するため原則として確定申告は不要です。未提出だと退職金の額面全体に 20.42% が源泉徴収されるので、確定申告で精算してください。年の途中で退職して年末までに再就職しなかった場合は、給与分の所得税が納めすぎになっていることがあり、確定申告で還付を受けられます。
勤続 20 年と 21 年で退職金の手取りはどれだけ違いますか?
退職所得控除が 800 万円から 870 万円へ 70 万円増えます。退職金 2,000 万円・非役員なら税金は 1,388,700 円から 1,282,200 円に下がり、手取りの差は 106,500 円です。勤続年数の 1 年未満の端数は 1 年に切り上げて数えるため、20 年 1 か月の在籍は 21 年として計算されます。
この記事をシェア:

関連ガイド