
傷病手当金はいつからいくらもらえる?初回支給までの流れと会社への影響
傷病手当金は、療養のために休み始めた日から連続 3日の待期を終えた4日目以降が支給対象になります。1日あたりの額は標準報酬日額の 2/3 で、通算1年6か月まで受け取れます。ただし最初の振込は休み始めから1か月以上先です。給与の締切日ごとに1か月分ずつ申請し、事業主の証明と医師の意見をそろえてから審査が始まるからです。この記事では初回振込までの日付、標準報酬月額別の支給額、会社にどこまで伝わるか、通算1年6か月の数え方を順に見ます。
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記載の計算結果は一般的な条件による概算です。個別の条件で金額は変わるため、手続きに直結する場面では公的機関の資料を確認してください。 (免責事項)
傷病手当金はいつからいくらもらえる?
支給対象は、療養のために休み始めた日から連続 3日の待期を終えた4日目以降です。1日あたりの額は標準報酬日額 × 2/3で、標準報酬日額は支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、10円未満を四捨五入した金額です。全国健康保険協会(協会けんぽ)は支給額を「【支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)」と示しています。
標準報酬月額 30 万円の場合、標準報酬日額は 10,000 円、日額はその 2/3 を1円未満四捨五入した 6,667 円です。支給対象になった日数を掛けた金額が支給額になります。
標準報酬月額別に並べると次のようになります。
| 標準報酬月額 | 1日あたりの額 | 支給対象 30 日分 | 支給対象 90 日分 | 支給対象 180 日分 | 30 日分 ÷ 標準報酬月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 200,000 円 | 4,447 円 | 133,410 円 | 400,230 円 | 800,460 円 | 66.70% |
| 300,000 円 | 6,667 円 | 200,010 円 | 600,030 円 | 1,200,060 円 | 66.67% |
| 400,000 円 | 8,887 円 | 266,610 円 | 799,830 円 | 1,599,660 円 | 66.65% |
右端の列は 2/3(66.67%)にそろいません。標準報酬月額 20 万円の行は 66.70% で 2/3 を上回り、40 万円の行は 66.65% で下回ります。端数処理が標準報酬日額を10円単位に四捨五入する段と2/3 を1円未満四捨五入する段の2回入るため、丸めの向きが標準報酬月額によって変わるからです。
1段目の丸めは1円の差で効きます。支給開始日以前12か月の間に標準報酬月額が変わっていると、平均額に端数が出ます。平均額が260,850 円なら30で割ると 8,695 円で、1の位が5なので切り上げて標準報酬日額は 8,700 円、日額は 5,800 円です。1円少ない 260,849 円だと標準報酬日額は 8,690 円に切り下がり、日額は 5,793 円になります。平均額の1円差が日額で 7 円、30日分では 210 円の差になります。
自分の標準報酬月額と休業日数での金額は傷病手当金 支給額計算で計算できます。標準報酬日額から日額、支給額までの計算過程がそのまま表示され、日数を細かく変えた場合や被保険者期間が12か月に満たない場合の上限も解説にまとめてあります。入力はブラウザ内で処理され、外部に送信されません。
比べる相手は休職前の手取りです。標準報酬月額は社会保険料の計算に使う等級の金額で、そこから税と社会保険料を引いた手取りとは別の数字です。休職前の手取りは給与の手取り計算で出せます。休職中も健康保険料と厚生年金保険料の自己負担分は発生するため、手元に残る額は表の支給額より少なくなります。税と保険料の扱いは傷病手当金 支給額計算の解説に整理してあります。
申請してから実際に支給されるまでどれくらいかかる?
申請を受け付けてから 10営業日以内です。協会けんぽは「審査の結果お支払い可能であれば、受付から 10営業日以内にお支払いいたします」としています。時間がかかるのは審査ではありません。申請できる状態になるまでに1か月前後かかります。
理由は事業主の証明です。協会けんぽは申請のサイクルについて「傷病手当金の申請は、給与の支払い有無について事業主の証明が必要になりますので、1か月単位で給与の締切日ごとに申請されることをお勧めします」としています。給与が支払われていないことが支給の要件なので、その月の給与計算が締まるまで証明できません。申請書は被保険者・事業主・主治医がそれぞれの欄を記入する様式で、医師の意見欄も対象期間が終わってから書いてもらいます。
給与の締切日が月末の会社で 2026年9月1日から休み始めた場合を追います。初回の振込は 10月19日ごろ、休み始めてから 48 日後です。
2回目以降は約1か月おきの間隔に落ち着きます。標準報酬月額 30 万円(日額 6,667 円)で 3 回分を並べると次のようになります。
| 申請 | 対象期間 | 支給対象日数 | 支給額 | 受付の目安 | 振込の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 9月4日〜9月30日 | 27 日 | 180,009 円 | 10月5日ごろ | 10月19日ごろ |
| 2回目 | 10月1日〜10月31日 | 31 日 | 206,677 円 | 11月5日ごろ | 11月19日ごろ |
| 3回目 | 11月1日〜11月30日 | 30 日 | 200,010 円 | 12月5日ごろ | 12月18日ごろ |
1回目だけ支給額が少ないのは待期の 3 日が抜けるからです。9月1日から 9月30日まで 30 日休んでいても、支給対象は 27 日です。2回目は 31日分がそのまま対象になり、金額は 26,668 円増えます。
受付の日付と振込の日付は目安です。事業主の証明と医師の意見がそろう時期は勤務先と通院の状況で変わり、10営業日という数え方には土日祝日が入りません。書類に不備があれば照会が入って延びます。進捗は協会けんぽの各都道府県支部で確認できます。健康保険組合に加入している場合は、申請の締切や振込の時期を組合が独自に定めていることがあるため、組合の案内を確認してください。
待期の 3 日と、そこから初回振込までの 48日は無給の期間になります。待期には有給休暇を使った日も数えるため、有給が残っていれば給与を受け取りながら待期を満たせます。ただし給与が出た日は支給対象になりません。
傷病手当金を受け取ると会社にバレる?
傷病手当金は、会社に知られずに受け取れる給付ではありません。申請書に事業主の証明欄があるためです。一方でお金は会社を経由しません。傷病手当金は加入している健康保険から本人へ支給される給付で、会社が支払うものではありません。
協会けんぽは申請書の記入について「申請書は被保険者、事業主、主治医が各項目を記入し、必要書類を添えてご提出ください」としています。事業主が証明するのは給与の支払い状況です。給与の支払いがないことが支給の要件なので、この証明を省く形の申請は成立しません。提出先は加入している協会けんぽの支部で、健康保険組合に加入している場合は組合です。
そもそも休職の事実は労務手続き上すでに会社に伝わっています。給与を止める処理も、休職期間中の社会保険料の扱いも会社が行います。傷病手当金の申請で新たに会社へ伝わるのは、休職の事実ではなく申請書に書く傷病名と療養の状況です。ここが気になる場合は、書類の受け渡し方を勤務先の担当者と加入先の健康保険に確認してください。
金額の面では、会社が代わりに受け取る仕組みもありません。振込先は申請書に記載した口座です。休職中に給与が一部でも支払われている場合は調整が入り、協会けんぽは「給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます」としています。会社の給与処理と傷病手当金の額は連動します。
受け取れるかどうかの個別の判断は、加入している健康保険が行います。労務不能かどうかについても、協会けんぽは「労務不能であるか否かは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断します」としています。休職や復職の進め方は就業規則の問題でもあるため、勤務先の規程と合わせて確認してください。
通算1年6か月はいつまで?退職したあとはどうなる?
支給開始日から通算して1年6か月です。モデルケースの支給開始日は 2026年9月4日なので、途切れずに受給し続けた場合の終わりは 2028年3月3日になります。途中で就労した期間があると、その分は消化されずに繰り越されるため終わりは後ろにずれます。
この「通算」は 令和4年1月1日施行の健康保険法改正で入りました。厚生労働省の案内は、改正前の「支給を開始した日から起算して1年6か月」では途中で就労して支給されない期間があってもその分だけ受け取れる期間が短くなっていたのに対し、改正後は「支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能」になったと説明しています。対象は「令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)」です。
退職しても、条件を満たせば残りの期間を受け取れます。これを資格喪失後の継続給付といいます。協会けんぽは条件を2つ挙げています。
- 「被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者又は国民健康保険に加入していた期間を除く)があること」
- 「資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること」
2つ目には注意書きが付いています。協会けんぽは「なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません」としています。挨拶や引き継ぎのための出勤も出勤です。退職日の扱いは、退職の意思を伝える時点で加入している健康保険に確認してください。
退職後に働ける状態へ戻ったら、次は雇用保険の基本手当です。ハローワークインターネットサービスは基本手当の受給要件を「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない『失業の状態』にあること」としています。傷病手当金は労務不能であることが要件なので、両者の前提は逆を向いています。同じ期間について両方は受け取れません。
療養が長引く場合は、基本手当の受給期間を延長する手続きがあります。同じ資料は、病気やけが等で30日以上職業に就くことができない場合に「受給資格者の申出によって、基本手当の受給期間を最大 4年間まで延長できます」としています。退職後に受け取れる基本手当の見込み額は失業保険 給付額シミュレーターで試算できます。申請から初回振込までの流れは失業保険はいつからもらえる?のガイドにまとめてあります。
まとめ
押さえる順番は3つです。1日あたりの額を出す。初回振込までの日付を書き出す。通算1年6か月の残りと退職後の扱いを確認する。
- 金額: 1日あたりは標準報酬日額の 2/3 です。標準報酬月額 30 万円なら日額 6,667 円で、支給対象 30 日分は 200,010 円です。自分の標準報酬月額と休業日数での金額は傷病手当金 支給額計算で計算できます
- 時期: 振込は受付から 10営業日以内ですが、申請できるのは対象期間の給与が締まってからです。モデルケースでは休み始めから初回振込まで 48日でした。この間の生活費を先に見積もってください
- 退職を考える場合: 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に出勤していなければ、退職後も残りの期間を受け取れます。働ける状態に戻ってからは基本手当に切り替えます。金額は失業保険 給付額シミュレーター、手続きの流れは失業保険はいつからもらえる?で確認できます
- 会社への影響: 申請書に事業主の証明欄があるため、会社を通さずに手続きは完結しません。お金は健康保険から本人の口座へ支給され、会社を経由しません
この記事の日付と金額はモデルケースの目安です。受け取れるかどうか、いくらになるかの判断は、加入している健康保険(協会けんぽの各都道府県支部または健康保険組合)が行います。労務不能かどうかは医師の意見と業務内容をもとに判断され、標準報酬月額や被保険者期間も加入先の記録で決まります。自分のケースは加入先の健康保険と勤務先の担当者に確認してください。
よくある質問
- 傷病手当金は毎月決まった日に振り込まれますか?
- 決まった日はありません。申請を受け付けてから審査を経て振り込まれるため、申請の時期に応じて後ろにずれます。協会けんぽは「審査の結果お支払い可能であれば、受付から10営業日以内にお支払いいたします」としています。同じ資料は申請のサイクルについて「傷病手当金の申請は、給与の支払い有無について事業主の証明が必要になりますので、1か月単位で給与の締切日ごとに申請されることをお勧めします」としています。給与の締切日が月末のモデルケースでは、9月4日〜9月30日の分の振込が10月19日ごろ、次が11月19日ごろという間隔になります。
- 会社が申請書の証明欄を書いてくれないときはどうすればいいですか?
- 加入している健康保険に相談してください。協会けんぽの申請書は被保険者・事業主・主治医がそれぞれの欄を記入する様式で、給与の支払いがなかったことは事業主が証明します。会社が証明に応じない場合の取り扱いは個別の事情によって変わるため、協会けんぽの各都道府県支部(健康保険組合に加入している場合は組合)に事情を伝えて手続きを確認してください。退職して被保険者資格を失っている場合も、窓口は加入していた健康保険です。
- 途中で復職して、また同じ病気で休んだ場合はどうなりますか?
- 残っている期間を繰り越して受け取れます。支給期間は支給開始日から通算して1年6か月で、令和4年1月1日施行の健康保険法改正でこの数え方に変わりました。厚生労働省の案内は、改正前は「支給を開始した日から起算して1年6か月」だったため途中で就労して支給されない期間があるとその分だけ受け取れる期間が短くなっていたのに対し、改正後は「支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能」になったと説明しています。通算化の対象は「令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)」です。
- 傷病手当金と失業保険を同時に受け取れますか?
- 同時には受け取れません。要件が逆を向いているためです。ハローワークインターネットサービスは基本手当の受給要件を「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない『失業の状態』にあること」としています。傷病手当金は療養のために労務不能であることが要件です。病気やけがで30日以上職業に就けない場合は、受給資格者の申出によって基本手当の受給期間を最大4年まで延長できます。順番と手続きは、加入している健康保険と住所地のハローワークで確認してください。
根拠にした資料
この記事の支給要件と待期・支給額の計算式・申請のサイクルと振込までの日数・事業主の証明・支給期間の通算化・資格喪失後の継続給付・基本手当の受給要件は次の資料に基づいています(リンクの到達確認は 2026 年 8 月時点)。
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金) — 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)よくあるご質問 — 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 健康保険傷病手当金支給申請書 — 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます — 厚生労働省
- 傷病手当金の支給期間の通算化(リーフレット) — 厚生労働省
- 基本手当について — ハローワークインターネットサービス
- 健康保険法(第99条 傷病手当金) — e-Gov 法令検索(デジタル庁)
改正で変わる数値: 支給額の算定式(標準報酬日額の 2/3)と待期 3日は健康保険法99条の給付内容で、毎年変わるものではありません。支給期間の通算1年6か月は 令和4年1月1日施行の改正によるもので、それより前に支給が始まったケースには経過措置があります。被保険者期間が12か月に満たない場合の上限になる全被保険者の標準報酬月額の平均額は年度ごとに公表され、支給開始日が令和7年4月1日以降は32 万円です。請求できる期間は労務不能だった日ごとにその翌日から 2年で、これを過ぎた日の分は時効にかかります。健康保険組合に加入している場合は、組合独自の付加給付があるため実際の支給額が異なることがあります。